短小亭日乗

短くて小さい日記

2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

稲垣足穂『少年愛の美学』

これはいいときにいいものを読んだ。というのは──男性も更年期を迎えるころにはあっちのほうがさっぱりご無沙汰になる。それはそれでいいのだが、これまでP(すなわち penis)を中心にして築き上げてきた自我が、Pの衰勢とともに崩壊の危機にさらされるので…

鉱物のことなど

ブログの説明に「本、鉱物、音楽」とあるのに、鉱物についてはまだ何も書いていない。じっさい鉱物については書きにくい。いちばん簡単なのは、手に入れた標本について、「こんなの買ったよ」と画像と名前だけ出しておくことだ。しかし、そんなものにはだれ…

永遠の夏 ── L'été éternel

永遠の、とくれば、夏、ですよね。永遠の冬なんていうのは考えにくい。ましてや永遠の春や秋などありえない。それらは来てはまた過ぎ去るものだ。これは夏をあらわすフランス語が「エテ」なので、それが「エテルネル(永遠の)」を連想させるのだろうか。い…

矢野目源一の肖像

矢野目源一の幻の詩集『光の処女』がネットでも見られるようになって、とうとうそういう時代がきたか、という感をつよくしている*1。彼の詩集『光の処女』と『聖瑪利亜の騎士』は、何年か前にテクストファイルを作ってネット上に流したことがある。電子テク…

音楽におけるヴァンピリズム

ギターを手にしてはや一年が過ぎた。この間、とくに練習らしい練習はしていないが、CDに合わせて即興的にギターを弾くのはよくやっている。たとえばバルトークの弦楽四重奏。この前衛的かつ変態的な曲集は、かつては洒落で聴いていたが、ギターで合わせるよ…

ルイ・マル『地下鉄のザジ』

大昔にテレビで見たものの再鑑賞。コメディはアメリカのものがダントツでおもしろいが、フランスもなかなかやりおるわい、といったところか。そういえば、私がはじめてパサージュなるものを知ったのもこの映画の中でだった。そのときは、こんな夢のような商…

田島裕子「あざやかに生きて」

今週のお題「わたしの好きな歌」たった一回聴いただけの曲が、なぜか執拗に記憶にとどまることがある。たとえば私の場合、田島裕子の「あざやかに生きて」がそれだ。じつはこの歌手名も、曲名も、私にとっては長いこと謎だった。なにしろ大昔に一度、テレビ…

山崎俊夫『夜の髪』

奢灞都館から出た作品集の第五巻。四巻まではわりと楽に手に入ったが、最終巻がなかなか見つからなかった。諦めて図書館で借りようか、とも思ったが、けっきょく定価の倍ほどのお金を払って購入することにした。しかしまあこれは買っておいてよかったと思う…

マラルメとボルヘス

マラルメの命題「世界は一冊の本となるべく存在している」は、100年前には気の利いたキャッチコピーだったかもしれないが、こんにちではどうだろうか。そのマラルメのあとをうけて、ボルヘスは「砂の本」を夢想する。時間的にも空間的にも無限のものを一冊に…

レルベルグとフォーレ

ベルギー象徴派の代表的な詩人にシャルル・ヴァン・レルベルグがいる。この人は私のちょうど100歳年上で、生まれた月もいっしょなら、日も3日しか違わない。だからどうしたといわれるかもしれないが、こういうところにもなんとなく親近感をおぼえる。レルベ…