そぞろごと

退嬰老人日記

ルイ・マル『地下鉄のザジ』

大昔にテレビで見たものの再鑑賞。コメディはアメリカのものがダントツでおもしろいが、フランスもなかなかやりおるわい、といったところか。

そういえば、私がはじめてパサージュなるものを知ったのもこの映画の中でだった。そのときは、こんな夢のような商店街が実際にあるとは思いもしなかった。その後何年も経って、ベンヤミンの『パサージュ論』を読んだとき、はじめてそれがパサージュと呼ばれる建造物であることを知った。



ベンヤミンは次のように書いている。

パリの市街地図から一本の刺激的な映画を作り出すことができるのではあるまいか。パリのさまざまな姿をその時間的な順序にしたがって展開していくことによって、街路や目抜き通りやパサージュや広場のここ数世紀における動きを三〇分という時間に凝縮することによってそれができるのではあるまいか。それに、遊歩者が行っていることも、まさにこれ以外のなにものでもないのである。■遊歩者■
(『パサージュ論 I』、p.162)


そうだ、パリはベンヤミンの、いやボードレールの昔から、たしかに遊歩に適した街なのである。この映画に出てくるトルスカイヨンは、正体不明の怪人物だが、その実体は「パリの遊歩者」ではないかと思う。


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