球形の鉱物標本
長らくご無沙汰していた鉱物標本だが、久しぶりに一点買った。今回のは球形に研磨したシャッタカイトその他の鉱物で、最近ちょっと宇宙づいていることから、星のようにみえるオブジェが欲しかったというのが正直なところ。
星でいえば月と地球とを混ぜ合わせたような感じだろうか。なんとなく水があって大陸があるようにも見えるし、クレーターの凸凹に覆われているようにも見える。
そんなふうに宇宙幻想と鉱物幻想とを重ね合わせるのは個人的には楽しいのだが、じつをいえば、鉱物を眺めることそれ自体が、宇宙を眺めることに通じていることを、なんとなくでも認識している人はどれだけいるか。
堀秀道氏は、鉱物と岩石との違いを説明して、こう書いている。
「(花崗岩や石灰岩のような)岩石は鉱物の粒が集合したものである。
ところが、方解石や石英や長石のような鉱物はルーペや顕微鏡で拡大しても、粒は見えてこない。強いて拡大をつづければ、見えるのは原子やイオンだろう。
つまり、鉱物は地球や宇宙を構成する固体の最小単位であり、生物にたとえれば細胞にあたるものと言えるかもしれない」
そして堀氏は鉱物をイメージするスローガンを掲げる。いわく、
「鉱物は手にとれる原子の世界」
「鉱物は地球の細胞」
「鉱物は大地の芸術作品」
つまるところ、鉱物というのは、原子論と宇宙論とがそこで出会う「場」なのである。
こういう観点からすれば、古代の人々が鉱物に与えてきたさまざまの効能も、なんとなく理解できるのではないかと思う。現代人が科学から得る知識を、古代人は直観と想像力から得ていた、といえるかもしれない。