そぞろごと

退嬰老人日記

日記

この一月から思い立って日記をつけている。こうして自分で日記を書いていると、他人の日記が気になってくる。たとえば永井荷風断腸亭日乗。題名からして厭味だなと思って顧みなかったが、うちにあった全集本で罹災日録というのをみると、たしかにじじむさくはあるが、それなりにりっぱな文章だ。それから一葉日記。これはすばらしい。涙なくしては読めない。一葉日記は書影版も出ているらしいが、そんなものが出ている作家なんてめったにいやしない。

外国ではルナール日記。これは以前から少しは読んでいた。ルナールは詩人ではなかったが、あの日記の最後のページに纏綿しているポエジーにはどんな人も無感覚ではいられないだろう。女性ではマリー・バシュキルツェフという、若くして死んだ画家の日記がある。この人は、初めから人に読ませるという目的で日記を書いている。詩人レルベルグの枕頭の書で、だいぶ前に買ったまま積読になっていたが、ようやっと読む時期がきたかという気がする。

日記というのは、始めるまでは億劫だが、始めてみればおもしろいものだ。人にすすめることではないけれども、自分ではもう少し続けてみようと思う。