そぞろごと

退嬰老人日記

オリンピックについて思うこと

コロナ騒ぎでオリンピックが延期となり、さらには中止になるかもしれないという。楽しみにしている人々にとっては由々しき事態だが、私としてはまるきり関心がなくて、どうでもいいや、という気持だった。

しかし、スポーツにほとんど興味のない私も、かつて一度だけ、オリンピックに熱中したことがある。それは1972年に行われたミュンヘン・オリンピックと、札幌オリンピックだ。このふたつの大会だけは、鮮烈な印象とともに私の記憶に焼きついている。

ミュンヘン・オリンピックについては、記録映画が撮られている。『時よとまれ、君は美しい』というもの。この題名は、おそらくゲーテの『ファウスト』から採られたものと思われるが、原題は Visions of eight といって、八人の監督によるオムニバス形式のドキュメンタリーだ。これにはヘンリー・マンシーニによるすばらしいサウンドトラックがある。その冒頭の一曲は「リュドミラのテーマ」といって、ソ連の体操選手であるリュドミラ・ツリシチェワに捧げられている。



しかし、私にとってリュドミラよりつよく印象に残っているのは、アメリカの水泳選手のマーク・スピッツだった。このすばらしい選手については多言は無用だろう。

札幌では、ジャンプ競技もよかったが、やはりジャネット・リンの「尻もち」が私の家族のあいだでは語り草になった。あの「尻もち」がなかったら、はたして彼女はあれほど有名になっていただろうか?



というわけで、私のような人間にも深い感銘を残すオリンピックがあったのだから、他のスポーツ好きの人々には、たまらない大会がいくつもあったと思う。そう考えてくると、裏側は金まみれ、薬物まみれといわれている今のオリンピックも、少なくとも明るい表舞台では、世の少年少女たちに大きな感動を与えるものには違いない。そして、こういうイベントを中心に世界が回っていくことを思えば、もし東京でオリンピックが開催されるのなら、それはそれで慶賀すべきことではないか、と思うようになった。