短小亭日乗

短くて小さい日記

ダニエル・シュミット『ラ・パロマ』


大昔に深夜放送で半分眠りながら見たものをもう一度ちゃんと見ておこうと。

そんな気になったのは、この映画がなかなかレアで、めったに見るチャンスがないせいでもある。本作にかぎらず、ダニエル・シュミットの作品は軒並み廃番で、再発のめども立っていない。過去の遺物として、だれも顧みないのだろうか。かつてはレンタルビデオ屋にけっこう並んでいたような気がするが……

まあそれはともかくとして、初めてちゃんとした形で見た本作、いやはや、そのヨーロッパ濃度のあまりの高さに参りました(もちろんいい意味で)。この手の映画を見るのが久しぶりというのもあるが、とにかくどこを切ってもヨーロッパという、金太郎飴のような作品。

話のもとになっているのは、ハンス・ハインツ・エーヴェルスの短篇「スタニスラワ・ダスプの遺言」だが、シュミットは原作のもつ俗悪さをみごとに脱色して、そこにグスタフ・クリムトふうの、世紀末ウィーン趣味を吹き込んでいる。クリムトマーラーのかもしだす、あの雰囲気がこの映画には横溢しているのだ。

だからそういうものが好きな人には無条件ですばらしい映画であり、そういうものに興味のない人にはだらだらした退屈な映画ということになるだろう。私にとっては、大枚はたいて買っただけのことはあった。


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