そぞろごと

退嬰老人日記

ベースをリペアに出す

こんなことは書いてもしかたないのかもしれないが、まあ愚痴みたいなものですね。

事の起りは、ベースの弦高を下げようとして、駒を削ったことだった。これがつい削りすぎて悲惨なことになった。胴の横に大きな穴が開いているのが前から気になっていたので、これを機にリペアに出すことにした。

修理が進むにつれ、あちこち悪い箇所が見つかって、オーバーホールの様相を呈してきた。当初の見積金額を超えないという条件で、ネック折れを含む損傷をすべて見てくれたリペアマンには感謝している。

さて、できあがったものを見ると、ものすごくうまく修理してあって、よぼよぼの老人が奇蹟の回春をはたしたかのようだ。ところが、じっさいに弾いてみると……

かつての深みのある音が決定的に失われて、安物のアンプで鳴らしたエレキベースのような音になってしまった。各弦の音のバランスもよくない。これはどういうことだろうか。

楽器というものは、ちょっとした調整の違いで、音が大幅に変る。もちろんよい方に変るのなら、何の問題もないが、わるい方に変るのは困る。

今回の調整では、弦高を下げたのと、指版を削ったのが決定的な要因だったのではないか。もともと私の楽器は19世紀のもので、根本的な作りが現代のものと異なっている。それは弦高、指版の形状、駒のアールなどに顕著に現れている。もちろん弾きにくいのだが、それと引き換えに、すばらしく深みのある音色が出る。この音色に私は惚れたのだった。

仕上がったものはたしかに弾きやすいことは弾きやすい。これまで苦労したハイポジションもなめらかに弾ける。なによりも弾いていて疲れない。それは確かにすばらしいことだが、かつてのあの音色が失われたことが、どうにも心にひっかかる。

まあ、これまでも、弦を交換した直後は、音にひどく違和感をおぼえたものだ。もしかしたら、今の音にもそのうち慣れるのかもしれない。

というわけで、しばらくは様子をみようと思う。